特集 透析患者における電解質・酸塩基平衡異常―透析液を含めて
【コラム】シナカルセト塩酸塩と低カルシウム血症
濱野 直人
1
,
駒場 大峰
1
1東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科
pp.198-200
発行日 2019年2月10日
Published Date 2019/2/10
DOI https://doi.org/10.19020/CD.0000000806
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透析患者において副甲状腺ホルモン(PTH)はカルシウム(Ca)代謝に深い関わりがある.PTH 分泌量のもっとも強い制御因子はCa 感知受容体(CaSR)とそれに結合するイオン化Ca である.PTH が分泌されると,破骨細胞による骨吸収が亢進し,血中にCa が動員される.これは血漿Ca 濃度が低下したことに対する合目的的反応である.シナカルセト塩酸塩(以下,シナカルセト)は,CaSR のイオン化Ca に対する感受性を亢進させることによりPTH 分泌を抑制する薬剤で,透析患者を対象に広く使用されている.透析患者において二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)は高頻度な合併症であり,慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)の中心的病態である.シナカルセトによるSHPT の治療はランダム化比較試験であるEVOLVE 試験において,生命予後の改善,骨折リスク低減などに寄与する可能性も報告されている.シナカルセトを使用するに当たり注意すべき合併症の一つが低Ca 血症である.これはSHPT により骨形成と骨吸収が亢進していた状態で,PTH 低下によって骨吸収が低下する一方,骨へのCa の取り込みは一過性に亢進するために生じ,副甲状腺摘出術(PTx)後のhungry bone syndrome と同様の病態と考えられる.低Ca 血症やそれに対するCa 負荷による有害事象を防ぐうえで,注意すべきポイントを以下に示す.
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