Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
集中治療室において人工呼吸中の患者の苦痛を和らげる鎮静管理は,全身麻酔と類似する事項も多く,麻酔科医が貢献しやすい領域である。両者には異なる点も少なからず存在するが,それらをできる限り明確に記述したい。
臨床業務において頻繁に用いられるが,“鎮静” の概念は一定ではない。狭義には鎮静は催眠,抗不安,健忘の作用により,不穏や興奮を鎮めることと定義される。時には鎮静は催眠と同義に使われることもある。広義には痛みや侵害刺激を和らげる鎮痛作用も包括した概念として使用され,本稿タイトルの “鎮静管理” や “鎮静法” はその例である。
近年,鎮静管理はPAD管理と呼ばれることも多い。2013年に米国集中治療医学会1)から公表された “Clinical practice guidelines for the management of pain, agitation, and delirium in adult patients in the intensive care unit” は,痛み・不穏・せん妄の病態管理を目的とした内容で作成されており,それぞれの頭文字(Pain, Agitation, Delirium)から2013 PAD guidelinesと略称される。日本集中治療医学会2)は2013 PAD guidelinesの流れを受けつつも,わが国の状況に合わせた「日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン(J-PADガイドライン)」を2014年に公表した。2013 PAD guidelinesは2018年に “Clinical practice guidelines for the management of pain, agitation/sedation, delirium, immobility, and sleep disruption in adult patients in the ICU(PADIS guidelines)”3)として改訂された。PADIS guidelinesは,不動と睡眠障害の管理の領域が追加されたものの,痛み・不穏・せん妄管理に関しては2013 PAD guidelinesを踏襲している。
全身麻酔で広く用いられていながら,わが国のPAD管理においては現在のところ普及していない薬剤としてレミフェンタニル,レミマゾラム,吸入麻酔薬(セボフルラン,イソフルラン)がある。本稿ではこれらの薬剤を概説し,PAD管理を向上させる可能性について考察する。
Copyright © 2023 KOKUSEIDO CO., LTD. All Rights Reserved.