特集 第1部 最近の眼科薬物治療 Ⅵ.眼瞼・眼窩
2 甲状腺眼症の眼瞼に対する局所療法
岡本 真奈
1
1兵庫医科大学眼科学教室
キーワード:
甲状腺眼症
,
眼瞼
,
ステロイド
,
ボツリヌス
Keyword:
甲状腺眼症
,
眼瞼
,
ステロイド
,
ボツリヌス
pp.1146-1150
発行日 2019年9月30日
Published Date 2019/9/30
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000001376
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甲状腺眼症は甲状腺刺激ホルモン(TSH:thyroid-stimulating hormone)受容体抗体を中心とする自己免疫疾患で,眼窩球後組織の線維芽細胞が刺激され炎症を起こす疾患である。眼窩内球後組織において前脂肪細胞から脂肪細胞に分化する線維芽細胞内にTSH受容体の存在が証明されており,主にこのTSH受容体が甲状腺と眼窩の共通抗原となって眼窩組織にリンパ球の浸潤を促し,サイトカインを分泌,マクロファージを活性化させ,炎症を引き起こす1)。甲状腺眼症の代表的なサインには,Graefe徴候(眼瞼遅滞),Dalrymple徴候(上眼瞼後退),Möbius徴候(輻湊不全),Gifford徴候(上眼瞼の翻転困難),Stellwag徴候(瞬目減少)といった,人名を冠したものが有名であるが,初発症状は,眼瞼症状であることが多い(図1A~C)。眼瞼症状は,顔貌の変化をきたし,患者に精神的な苦痛を与える。また,炎症による筋肉の線維化の結果,拘縮や伸展制限を生じた眼瞼では,ドライアイや兎眼を惹起し,機能面でも問題が生じる。本稿では,当院で施行している実際の眼瞼症状に対する局所療法について解説する。
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