特集 斜視に対するA型ボツリヌス毒素(BTX-A)注射療法
3 甲状腺眼症に伴う斜視に対するBTX-A療法
神前 あい
1
1オリンピア眼科病院(東京都渋谷区)
キーワード:
甲状腺眼症
,
A型ボツリヌス毒素注射
,
斜視
Keyword:
甲状腺眼症
,
A型ボツリヌス毒素注射
,
斜視
pp.1483-1487
発行日 2019年12月5日
Published Date 2019/12/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000001474
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甲状腺眼症の斜視は,外眼筋の炎症性肥大による収縮と結合織の増生による伸展制限によって起こる。これまでわが国では,甲状腺眼症の斜視に対しての治療は,活動期には斜視角の変動がみられるため,まず球後病変の消炎治療を行い,消炎後の不活動期に残存する斜視に対して斜視手術を行うのが一般的であった。手術までの期間はプリズム眼鏡や遮閉膜(症例3参照)で対応していたが,その間,患者は複視の症状により日常生活に支障をきたし,quality of lifeが低下していた。一方,海外では以前から甲状腺眼症の斜視に対してA型ボツリヌス毒素(BTX-A)注射が施行されていた。1984年にScott1)は甲状腺眼症の眼球運動障害に対してBTX-A注射を3例は下直筋,2例は下直筋と外直筋に2~7回投与した結果,斜視角が25プリズム以下の初期の症例には有効であると報告している。その後,Lyonら2)は38例にBTX-A注射を行い,6例では斜視手術が不要となり,12例では注射効果はみられるが最終的に斜視手術に至ったと報告し,投与時期は活動期が有効であると述べている。その他,斜視角が軽度の症例に有効3),病初期に有効3),眼窩減圧術後4),斜視手術併用5)や斜視手術後6)にも有効など,さまざまな報告がみられる。日本でも2015年より斜視に対するBTX-A注射が保険適用となり,甲状腺眼症においても活動期や不活動期という病期に関係なく,BTX-A治療が可能となったため,適応となる対象が増えてきている。
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