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急性大動脈解離(acute aortic dissection;AAD)は,急性心筋梗塞(acutemyocardial infarction;AMI)の院内死亡率が5%台となった現在においてもまだ致死率の高い疾患であり,心臓血管治療室(coronary care unit or cardiaccare unit;CCU)に搬送される疾患のなかで,大動脈瘤切迫破裂に次いで高い院内死亡率である(図1)。3次救急病院へ院外心停止症例としても搬送される重症心血管系疾患である。バイスタンダーCPR(心肺蘇生法[cardiopulmonary resuscitation])や自動体外式除細動器(automatedexternal defibrillator;AED)などの救命救急処置によって救命できる可能性のある虚血性心疾患の心室細動例と異なり,AADによってひとたびショック状態や心肺停止に陥った場合には,心臓血管外科医による救命救急処置がなければ救命はまったく望めない。従って,AADを疑う症例に遭遇した場合には,血行動態が安定していたとしても可及的速やかに緊急手術の可能な心臓血管外科チームを擁する医療機関へ搬送することが必須である。AADの対処においてはその解離の部位や形態が判明し,合併症の有無が明らかとなるまで決して油断してはならず,常に急変する可能性を念頭に,院内では心臓血管外科チームとのアクセス,院外では医療機関同士の速やかな転送転院が必要である。本稿では,AAD診療における緊急搬送システム,そのなかでのCCU医のかかわり方を述べるが,AAD診療における緊急搬送システムの構築の必要性についてまず述べ,そのなかでのCCU医,循環器内科医の役割を考察する。救急の現場では,AADと大動脈瘤切迫破裂とを合わせて「急性大動脈疾患」として対応している。大動脈瘤切迫破裂は,AADに比べ,より院内死亡率が高く,重症である。これから述べる緊急搬送体制では,AADと大動脈瘤切迫破裂は同じシステムのなかで運用されるが,ここではAADに対する対応のみを述べる。
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