特集 大動脈疾患を見直す
識る 大動脈疾患の遺伝子診断
森崎 裕子
1
1榊原記念病院 臨床遺伝科
キーワード:
Ehlers-Danlos症候群
,
Marfan症候群
,
遺伝相談
,
大動脈疾患
,
遺伝学的検査
,
Loeys-Dietz症候群
Keyword:
Aortic Diseases
,
Ehlers-Danlos Syndrome
,
Genetic Testing
,
Genetic Counseling
,
Marfan Syndrome
,
Loeys-Dietz Syndrome
pp.729-733
発行日 2017年7月9日
Published Date 2017/7/9
DOI https://doi.org/10.18885/J03097.2017303049
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大動脈瘤・解離の多くは,腹部大動脈を好発部位とする高齢者の病気であり,高血圧・動脈硬化がその背景にある。10~20%に家族歴を認めることから何らかの遺伝的要因が関与していると推測されるが,それ以上に生活習慣などの環境要因の影響が大きいとされ,一般的には,遺伝的要因と環境要因の両者が発症に関与する多因子疾患と考えられている。これに対し,家族性あるいは若年性の大動脈瘤・解離は,胸部,特に上行大動脈に好発し,動脈硬化や高血圧の合併を認めない場合が多く,その一部には,単一遺伝子の異常により大動脈壁を構成する血管平滑筋細胞や細胞外マトリックスの先天的な構造異常や機能異常を生じ,その結果,大動脈瘤・解離にいたるものがあることが知られている。その代表はFBN 1遺伝子異常によるMarfan症候群やCOL 3A1遺伝子異常による血管型Ehlers-Danlos症候群であるが,近年の遺伝学的解析技術の進展により,それ以外の遺伝子の異常による家族性あるいは若年性大動脈瘤・解離が次々報告されており,これらは,家族性(遺伝性)大動脈瘤・解離と総称される。多くの場合,解離発症前の大動脈拡張期に降圧薬治療や予防的基部置換術などによる早期介入を行うことにより,解離イベントを予防することが可能であることから,早期診断が重要であるとされるが,実際には,解離発症前の診断はこれらの疾患に熟知した専門医以外では難しく,しばしば見過ごされているのが現状である。しかし,近年の遺伝子解析技術の進歩により,これらの疾患の遺伝学的検査が一般診療のなかで行えるようになってきており,早期診断につながることが期待されている。
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