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急性大動脈解離と大動脈瘤切迫破裂は,ともに,緊急心血管手術を要する重篤な疾患であり,東京都CCUネットワークではこれらをまとめて「急性大動脈症」と呼称している。国際大動脈解離レジストリー(IRAD)では,「acute aortic syndrome」の呼称を使用しているが,これは欧米で分類しているclassic aortic dissection,intramural hematoma,penetrating aortic ulcerをまとめてよぶ際の呼称であって,大動脈瘤切迫破裂は通常含んでいない。論文によっては,大動脈破裂も含んでいることがあるが,通常は,わが国で用いられる「急性大動脈解離」のみを指している。大動脈瘤切迫破裂に対しては,診断確定と同時に心臓血管外科を中心とする緊急大血管置換術や緊急ステントグラフト留置術が,救命を目的に施行される。この疾患は,腹痛とともに腹部の拍動性腫瘤の触知が確認されたならば,直ちにCT,エコーなどの画像診断を行うとともに外科処置が開始されなければならない超重症の致死的疾患である。患者の来院から確定診断・治療決定までに多くの時間を費やしてはならない。一方,急性大動脈解離も病型によっては大動脈瘤切迫破裂と同様に緊急外科手術を必要とする重篤な疾患であるが,急性大動脈解離を疑う症例が来院した際には,確定診断,病型診断,病態把握を行った後に緊急手術の要否を決定するという作業が加わり,さらに手術は施行せずに保存的治療を中心に行う患者も半数以上いる。ここに,救急医や循環器内科など手術担当ではない非外科医の役割が発生する。従って,循環器内科医の役割を論ずる際には,大動脈瘤切迫破裂と急性大動脈解離とで明らかに役割が異なる。本稿では,急性大動脈解離に限定して論じようと思う。東京都CCUネットワークの2007~2009年の調査(非公式)では急性大動脈解離発症例の約44%がA型解離であり,そのうち偽腔開存型が65%,閉塞型が35%であった。A型偽腔開存型の85%が,A型偽腔閉塞型の54%が緊急手術され,A型解離発生数の全体の72.8%が緊急手術を受けた。B型解離は13.2%が手術治療を受けた(図1,2)。急性解離全体の発生数ではA型解離が44%を占め,B型解離が56%を占めることをもとに計算すれば,A型解離は32%,B型解離は8%,合わせて全体の40%が手術を受けていた。従って急性大動脈解離発生数のうち残る60%の症例が,非手術症例としての入院後管理が必要となる。受診から診断,入院治療,退院までの急性大動脈症の診療は,各々の施設で各々の体制のもとに,救急医学科,循環器内科,心臓血管外科,麻酔科,リハビリ科など関連する診療科で密な連携を取りながら行われている。
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