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は じ め に
慢性に経過する全身性炎症疾患である関節リウマチ(RA)は,持続する滑膜炎により局所での周囲組織の破壊,主には関節構造が破綻し,関節機能が低下する.これにより,四肢の運動機能が低下し,ひいては社会的行動の制限まで生じうる.現在のRA治療は,設定した明確な治療目標に向かって,おのおのの国での推奨治療やガイドラインに従いながら,より病初期から薬物介入をするというTreat to Targetという共通した治療概念のもとで1),世界中が治療にたずさわっている.生物学的製剤を含めたさまざまな抗リウマチ薬を駆使することで2)近年のRA治療成績はおおいに改善し,今では治療目標を寛解に設定することも可能となってきている.
一方,日本整形外科学会(日整会)ではロコモティブシンドローム(ロコモ)の概念を2007年に提唱し,超高齢社会に突入している日本社会での老人の健康寿命の延伸に寄与するべく大規模な研究・啓発活動をすすめている3).ロコモは運動機能障害により移動能が低下した状態と定義され要介護状態にいたるリスクが高いため,その前に運動訓練の介入により運動機能を回復させる方策が必要である.運動器リハビリテーションのための保険収載された疾患名として運動器不安定症が定義されており,その要因としての11疾患の一つにRAもあげられている4).RAでのロコモには主に三つの要因が関与する.まず,下肢の関節破壊が進行するとそれ自体が移動能を低下させロコモを呈する.次に,破壊関節の不使用による周囲筋の筋萎縮に加え,全身性の炎症そのものから筋肉組織の異化がすすむことによるサルコペニアも関連しうるため5),ロコモがさらに助長されうる.したがってRAの場合はロコモを呈する患者は必ずしも老年とは限らない.さらに,RA患者は前述のとおり近年の治療の改善により高齢化していることが指摘されており,当然加齢によるロコモが付加される.このように,RAではロコモにいたる過程でいくつかの要因が関与するため,薬物治療のみならずロコモの発生原因に対応した予防策,介入策が重要となる.
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