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は じ め に
厚生労働省国民生活基礎調査の要介護になった原因において,2016年に認知症がはじめて脳卒中を抜いて1位となって以来,認知症,脳卒中,高齢による衰弱,骨折・転倒,関節疾患の順で固定化してきている1).
要介護の原因である上位疾患のうち,3位となった高齢による衰弱の前段階として,フレイルという概念が社会に浸透しつつある.日本老年医学会からのステートメント2)によると,フレイルとは筋力の低下により動作の俊敏性が失われて転倒しやすくなるような身体的問題のみならず,認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題,独居や経済的困窮などの社会的問題を含む概念である.
フレイルの定義によると筋力の低下はフレイルの身体的要素の主体をなす病態であるが,筋力の低下を含む疾患概念である加齢性筋量減少症(サルコペニア)も近年注目を集めている.サルコペニアは筋肉量の低下を主体としているが,握力や歩行速度の低下など機能的低下も含む概念3,4)である.このように,要介護になった理由の3位が筋に関連する疾患であるが,4位と5位にも骨と関節という運動器の疾患が続いている.すなわちこれら介護になった原因疾患を一見すると,介護予防のためには運動器疾患の予防がきわめて重要であることがわかる.そこで日本整形外科学会(日整会)は移動機能の低下をきたし,進行すると介護が必要になるリスクが高い状態をロコモティブシンドローム(ロコモ)と定義し5,6),要介護予防の立場から疾患横断的に運動器障害をとらえ,その予防対策に乗り出している.
このように,フレイルとロコモは異なる医学的土壌から生まれてきた疾患概念であるが,いずれもサルコペニアという疾患概念を内包し,これら三つの概念は互いに関連し合っていることは明らかである.しかしながらフレイル・サルコペニアとロコモとの関連を検討した報告はまだ少ない.
筆者らは,わが国の運動器障害とそれによる運動障害,要介護予防のために,運動器障害の基本的疫学指標を明らかにし,その危険因子を同定することを主たる目的として,2005年より大規模住民コホートResearch on Osteoarthritis/osteoporosis Against Disability(ROAD)プロジェクトを開始した7).ROADでは,2008~2010年に実施された第2回調査でフレイル,サルコペニアの調査を開始し,2012~2013年の第3回調査からはロコモの簡易測定法であるロコモ度テストの検診を開始した.そこで本稿では,フレイル,サルコペニア,ロコモの測定結果も出揃ったROADスタディ第3回調査結果をもとに,フレイル,サルコペニアとロコモとの相互関連について検討する.
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