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は じ め に
本邦では成人の8人に1人が慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)とも推定されており,新たな国民病とされている1).腎機能は経年的に低下することから,社会の高齢化とともにCKDの重荷がより大きくなることが予想されている.CKDは,① 尿異常,画像診断,血液,病理で腎障害の存在が明らか,特に0.15g/gCr以上の蛋白尿が存在する,② 糸球体濾過量(GFR)<60ml/分/1.73m2のうち,①,② のいずれかまたは,両方が3ヵ月以上持続すること,と定義され,病期G1~G5に分類される.一般的には,保存期CKD患者とは,透析などの腎代替療法の治療開始にはいたっていない患者のことを指す2).一方,ロコモティブシンドローム(ロコモ)とは運動器の障害のために移動機能が低下した状態を指す.運動器の障害は高齢者が要介護になる原因の1位であり,40歳台以上の日本人の4,590万人が該当するとされている3).ロコモが進行すると生活活動に大きな影響を与え,介護が必要となるリスクを高めたり,介護が必要になったりする.また,サルコペニアは加齢に伴う骨格筋の量的・質的低下であるが,量的低下によって糖代謝処理容量の低下による糖代謝異常や骨へのメカニカルな刺激の低下による筋量や骨量の低下をもたらすと考えられている4).さらにサルコペニアは,高齢者のふらつき,転倒・骨折,機能障害,要介護化,フレイルに密接に関連している5).フレイルはストレスに対する脆弱性が進行して生活機能障害や要介護状態などの転機に陥りやすい状態である.筋力低下により転倒しやすくなるような身体的問題のみならず,認知機能障害やうつなどの精神心理的問題,独居や経済的困窮などの社会的な問題を含む複合的概念である5).すなわち,ロコモは運動機能低下のハイリスクにある者を広くとらえており,フレイルはより限定的に要介護ハイリスク者をとらえている可能性があると考えられる.サルコペニアは,筋量・筋肉の減少を有し,ロコモがある程度進行した状態に内包されると考えられる5).
一方で骨粗鬆症もまたCKD患者に多くみられ,高齢社会への突入に伴い,一層大きな問題となることが確実視されている.問題は,このCKDと骨粗鬆症が相加的,相乗的に働くことである6).CKDは,骨脆弱性の原因であるとともに,CKD自体が骨質の低下による骨脆弱性の要因となる.CKDの進展に伴う二次性副甲状腺機能亢進症による腎性骨異栄養症を呈し,さらに骨折リスクが増加する7)ことが明らかになっている.
本稿では,保存期CKD患者におけるロコモ,フレイル,サルコペニアの関係について自験例をもとに解説し,二次的に生じる骨粗鬆症との関係についても明らかにする.
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