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は じ め に
腰椎分離症の多くは発育期の運動選手に生じることが知られている1).腰椎分離症は発生頻度が高く,進行すると治療成績がわるくなるため,早期に診断を確定させるべきであると考える.一方で単純X線検査による診断率は高くなく2),より精度の高い検査を早期に行うことが望ましい.昨今ではMRIにおいてCTに類似した骨条件画像を腰椎分離症に応用することで,CT撮影を回避し被曝をなくすことが可能となった3).しかし被曝に対する過剰な配慮が原因で,診断が遅れたり診断精度が低下することは避けるべきである.特に発育期の患者には被曝を減らしつつ効率的に正確な診断を下すことが重要である.
また急性期の腰椎分離症の治療に関しては保存療法が第一選択とされ,その癒合率は76.2%とされている4).一方で保存療法では骨癒合が得られず偽関節にいたる症例が存在する.偽関節にいたる可能性が高いと予測される症例には保存療法は効率的とはいえない.保存療法を断念し手術適応と判断するためには,腰椎分離症の予後を正確に予測する必要がある.保存療法の骨癒合阻害因子を解析して得られたスコアリングシステムが骨癒合の予後予測に有用とされ5,6),手術適応の一助となる.
また中には腰椎分離症の保存療法が長期に及ぶこともある7).しかし,運動選手にとって競技を長期に離脱することは,競技力向上という観点からは望ましくない.より短い期間で競技復帰を可能とすることが重要であり,近年では手術療法が保存療法よりも短期間で競技復帰を可能とすることも報告されている8,9).上記のように癒合率の改善もしくは治療期間の短縮のために,症例によっては手術療法が有用と考えられている.
本稿では,被曝に配慮した効率的な診断戦略,および癒合率や癒合期間に配慮した効率的な治療戦略を紹介する.
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