発行日 2016年8月1日
Published Date 2016/8/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2016309859
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症例は64歳男性で、30歳時に胃潰瘍に対して単純胃切除と虫垂切除術、61歳時に吻合部潰瘍で内服治療を受けた。健康診断で異常を指摘され、胃内視鏡検査で吻合部胃側に腫瘤病変を指摘された。胃内視鏡所見では、残胃吻合部後壁側を中心に、ほぼ全周性に正常胃粘膜ヒダから漸次移行する広基性ポリープ状隆起を認めた。この隆起の大彎側の一部に、やや発赤の強い領域がみられ、同部位からの生検で高分化腺癌と診断した。ポリープ状嚢胞性胃炎(GCP)内に発生した残胃吻合部の早期胃癌と診断し、手術を施行した。病理組織学的所見で、吻合部胃側の隆起性病巣には、腺窩上皮過形成、粘膜固有層から粘膜下層における嚢胞状腺管の増生、粘膜筋板の挙上を認め、いずれもGCPに特徴的な所見と一致した。また隆起性病巣の大彎側部分には、管状から篩状構造を形成しながら粘膜下層まで浸潤増殖する異型腺上皮からなる中分化型管状腺癌を認めた。この腺癌の部分は周囲をGCPに取り囲まれており、GCPを発生母地とした早期残胃癌と診断した。術後2年6ヵ月経過した現在、再発は認めていない。
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