発行日 2010年5月1日
Published Date 2010/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2010200979
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48歳男。心窩部痛が出現し、上部消化管内視鏡で胃前庭部に通過障害を伴う全周性の4型腫瘍を認めた。腹部造影CTでは胃前庭部大彎側に浸潤所見を認め、腹膜転移を伴う胃癌と診断し、通過障害に対する胃空腸吻合術を施行した。術中所見で腫瘍は横行結腸間膜、後腹膜へ浸潤しており、上腹部の壁側などに腹膜転移を認め、病理検査結果は中分化腺癌であった。臨床試験としてdocetaxel 40mg/m2とcisplatin 60mg/m2(いずれもday1・29に点滴)およびS-1 80mg/m2(2週間内服・2週間休薬)の化学療法を開始し、重篤な有害事象はなく順調に経過した。6コース終了後には腫瘍の縮小を認め、その後の腹腔鏡検査で腹膜転移が陰性化した所見が得られたため胃全摘術を施行した。術中所見で漿膜浸潤や他臓器浸潤はなく、結腸前経由でRoux-en-Y再建した。病理組織像では胃前庭部に広範な線維化を認め、化学療法の効果はGrade 2と判定した。術後化学療法は行わず、17ヵ月経過して再発はない。
©Nankodo Co., Ltd., 2010