発行日 2015年5月1日
Published Date 2015/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2015265072
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
86歳女性。糖尿病で近医へ通院中であった。今回、1週間前より左下腹部の腫瘤と痛みを訴え精査目的で紹介となった。入院時、左下腹部には小児頭大の可動性不良な腫瘤が触知されたが、肝脾腫と腹水は認めず、表在リンパ節も触知されなかった。一方、胸腹部造影CTでは右肺S2に区域性の気管支に沿った結節影・樹状陰影が認められ、腹部では下行結腸腸間膜付着部対側に約2cmの壁肥厚が確認された。また、下行結腸の腸間膜には63×43mm大の充実性腫瘍が認められたほか、肝門部には22mm大のリンパ節腫大がみられた。以上、これらの所見を踏まえて、更に下部消化管内視鏡を行なったところ、肛門縁から30cmの下行結腸に易出血性15mm大の隆起性病変が認められ、加えてPET-CT所見から本症例はcT3、N1(#242)、M1(肝門部リンパ節)の下行結腸低分化腺癌と診断された、以後、緩和ケアチーム併診では十分な鎮痛効果が得られず疼痛管理に難渋したため症状緩和目的を含めHartmann手術施行となった。術中所見では腸間膜の腫瘍は小児頭大で硬く、一部漿膜面に露出し白苔を伴っていたが腸間膜との連続性はなく、下行結腸の中間リンパ節への孤立性転移と考えられた。その結果、病理組織学的所見では腸間膜の腫瘍は63×24mmで腸管壁との連続性は認めず、リンパ節転移は#242に認められた巨大リンパ節のみであった。尚、術後経過は良好であったが、家族・本人の希望で化学療法は施行せず、患者は術後3ヵ月目に原癌死した。
©Nankodo Co., Ltd., 2015