発行日 2015年2月1日
Published Date 2015/2/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2015167448
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53歳男性。腹部膨満感を主訴に近医を受診、下部消化管内視鏡検査にてS状結腸に腫瘤を認め、S状結腸癌による閉塞性大腸炎の疑いで、著者らの施設へ紹介となった。所見では下部消化管内視鏡でSD junctionに全周性腫瘤が認められたほか、狭窄を来した腸管の伸展は不良で、内視鏡は狭窄部を通過できなかった。また、腹部造影CTでは下行結腸からSD junctionにかけ腫瘤性病変がみられ、腫瘤周囲の腸間膜には軽度の毛羽立ちがあり、腫瘤より口側結腸の拡張が確認された。以上より、本症例は大腸癌による閉塞性大腸炎が強く疑われ、減圧目的で横行結腸に人工肛門造設術を行い、腸管の減圧成功後、術前の腫瘤生検を行なったところGroup 1であった。以後、再度精査を行なうこととなり、下部消化管内視鏡で人工肛門と肛門側から病変部を観察したが、両側ともに腫瘤による狭窄がみられたものの、発赤や腫脹は以前より改善していた。次いで内視鏡所見では4型大腸癌または炎症の疑いで、再度の生検でもGroup 1であった。一方、FDG-PETでは下行結腸からSD junctionにかけFDGの集積を伴う腫瘤がみられ、腫瘍または炎症性腫瘤の疑いであった。以上、これらの所見を踏まえ、S状結腸切除術+人工肛門閉鎖術を施行した結果、病理診断はS状結腸憩室炎であった。尚、本症例の臨床的経過からも術前に腫瘤の診断が困難な場合には迅速病理診断を行うことで低侵襲の手術が行える可能性があると考えられた。
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