発行日 2010年6月1日
Published Date 2010/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2010242787
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77歳男。患者は下痢を主訴とした。約1年半前に便通異常と下血を認め、内科を受診、S状結腸憩室炎が指摘されたものの、症状が改善したため経過観察されていた。今回、精査によりS状結腸に狭窄病変がみられ、外科へ紹介になった。所見では内視鏡および画像等でS状結腸癌と胸椎への骨転移が疑われ、手術が行われたところ、術中、S状結腸から直腸S状部にかけて腸管壁の肥厚・硬化が認められた。更に腸間膜の腫脹も強く、周囲組織への強固な癒着が確認された。そこで、癒着を剥離し、S状結腸狭窄の原因と考えられる硬化した病変部を切除した結果、切除標本所見で腫瘍性病変は認めず、S状結腸粘膜の腸間膜側よりに多数の憩室が認められた。そして、これらのうち数個は互いに腸管壁内を通して瘻孔を形成しており、固有筋層から漿膜下組織において瘻孔の先端が癒合していた。尚、検索した限り、腸管壁内で憩室どうしが瘻孔を形成したとの報告は、他にはみられなかった。
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