臨床経験
保存的加療で軽快した開心術後の非閉塞性腸間膜虚血
西田 卓弘
1
,
金城 玉洋
,
松本 和久
,
向原 公介
,
豊川 建二
,
千々岩 一男
1宮崎大学 腫瘍機能制御外科学
キーワード:
Papaverine
,
狭心症
,
術後合併症
,
心筋梗塞
,
腸間膜
,
冠状動脈バイパス術
,
開心術
,
僧帽弁形成術
,
虚血性僧帽弁逆流
,
非閉塞性腸間膜虚血
Keyword:
Coronary Artery Bypass
,
Angina Pectoris
,
Mesentery
,
Myocardial Infarction
,
Papaverine
,
Postoperative Complications
,
Mitral Valve Annuloplasty
,
Mesenteric Ischemia
pp.1025-1028
発行日 2014年9月1日
Published Date 2014/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2015062452
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61歳男性。労作時胸痛が出現し近医を受診、狭心症と陳旧性心筋梗塞、僧帽弁閉鎖不全と診断され、著者らの施設へ紹介となった。入院時、経胸壁心エコーでは左室駆出率61%、重症虚血性僧帽弁逆流で、下壁・中隔の壁運動低下が認められた。また、心臓カテーテルでは冠動脈造影で右冠動脈近位部、左冠動脈回旋枝遠位部、左冠動脈前下行枝中位部に狭窄と閉塞が認められた。以上、これらの所見に基づき治療は冠状動脈バイパス術(4枝)および僧帽弁形成術が施行されたが、弁形成後の術中経食道エコーにて僧帽弁逆流の残存がみられたため僧帽弁置換術に術式が変更された。手術は8時間10分の長時間を要したが、人工呼吸器は術後12時間で離脱することができ、一方、肺水腫と胸水貯留にて一時biphasic positive airway pressure(BiPAP)で呼吸管理が行われたものの、こちらも術後5日目にはBiPAPから離脱できた。しかし、術後7日目に激しい腹痛が出現、腹部CTを行なったところ、上腸間膜動脈(SMA)本幹の狭小化と造影効果の低下が確認され、血管造影ではSMA基部より7cm末梢から狭小化と腸管血流低下が認められた。非閉塞性腸間膜虚血と診断されたが、更に激しい腰痛も出現して造影CTにて両側腎臓・脾虚血と診断された。以後、alprostadilなどの投与で腹痛および腰痛はともに軽減したが、心不全、腎不全、難治性肺炎の治療のため患者は長期入院を要した。
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