発行日 2012年7月1日
Published Date 2012/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2012314023
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85歳男。労作時胸痛を主訴とした。冠状動脈造影で右冠状動脈、左冠状動脈、左冠状動脈主幹部に狭窄を認めた。高齢、頸動脈狭窄、上行大動脈石灰化などのため心拍動下冠状動脈バイパスを施行した。バイパスに使用する血管は左内胸動脈、右内胸動脈、大伏在静脈から採取した。術直後の血行動態は安定しており、術後6時間で人工呼吸器を離脱した。しかし、術後9時間より代謝性アシドーシスに続いて著明な腹痛や全身性の大理石紋様が出現し、非閉塞性腸管虚血(NOMI)を疑った。上腸間膜動脈(SMA)造影を施行したところ、SMA分枝の全域にわたる攣縮を認め、NOMIの診断となった。Papaverine hydrochlorideを動注したが、改善しなかった。翌朝の血液検査でCPK、AST、LDHの逸脱酵素の高値を認め、腸管壊死が決定的となった。その後、全身状態が進行性に悪化し、多臓器不全で術後3日に死亡した。
©Nankodo Co., Ltd., 2012