発行日 2010年5月1日
Published Date 2010/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2010211417
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53歳女。患者は下腹痛を主訴とした。CTではS状結腸の周囲に少量の腹水を認め、S状結腸壁の造影効果不良と軽度の壁肥厚がみられたが、下腸間膜動脈領域に明らかな血流障害は認めなかった。下部消化管内視鏡では肛門側よりのS状結腸から下行結腸にかけて粗雑で黒色調の壊死様粘膜が認められ、一方、組織標本では好中球の浸潤と上皮の欠損および腺管の萎縮がみられ、高度の腸管虚血を示す所見と考えられた。以上より、本症例は虚血性腸炎が疑われ、絶食と補液による保存的治療を開始したところ、数時間後に腹痛は改善したが、第1病日目の夜から発熱・下痢・下血が生じ、翌日には炎症反応が急上昇した。しかし、第5病日目経過で症状は全て消失し、炎症反応も低下した。以後、症状の再増悪はみられず、第14病日目には患者は退院となった。尚、本症例は第12病日目の下部消化管内視鏡で病変が分節的に分布していることが判明し、最終的に非閉塞性腸管虚血症と診断された。
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