発行日 2012年5月1日
Published Date 2012/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2012264960
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88歳男。肝細胞癌に対し経皮的エタノール注入療法を受け、経過観察中の4年11ヵ月後に肝S3とS6に再発が疑われた。冠動脈化学塞栓療法(TACE)を施行したが、肝S3病変は血流に乏しくTACEによる腫瘍制御が困難であった。肝胆道系酵素はいずれも軽度上昇し、AFPは正常で、PIVKAは上昇していたが肝障害度はAで肝予備能は良好であった。腹部CTでは、肝左葉S3の門脈臍部左辺縁に径21mmの腫瘤を認め、肝右葉S6の下縁に8mm程度の腫瘤を認め、S6病変は肝動脈造影下CTで濃染を認めた。経動脈性門脈造影下CTで肝S3、S6に一致した造影不良域を認めた。以上から、肝細胞癌(S3、S6)と診断し、肝外側区域切除、肝S6部分切除、胆嚢摘出術を施行した。病理組織学的には、S3腫瘍は高分化型肝細胞癌、trabecular type単純結節周囲増殖型で、hepatocyteは陽性、ck-7、ck-20、AFP、CEA、CA19-9は陰性であった。S6腫瘍は腫瘤形成型の肝内胆管癌と、高分化型腺癌で、AFP、hepatocyteは陰性、ck-7、ck-20、CEA、CA19-9は陽性であった。経過良好で術後12病日に退院したが、術後6ヵ月のCTにて尾状葉に肝細胞癌の再発を認め、TACEを行い経過観察中である。
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