発行日 2010年6月1日
Published Date 2010/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2010242780
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40歳代男。患者は腹痛および嘔吐を主訴とした。上部消化管内視鏡、画像所見で十二指腸浸潤が著しく、幽門狭窄を伴う高度進行胃癌と診断された。膵頭十二指腸切除をしなければ根治切除が不可能と考えられたが、経口摂取が不能であることから、まずBraun吻合付加胃空腸吻合術が行われ、術後はS-1/CDDP併用化学療法を6コースが施行された。その結果、患者は食欲良好で、化学療法の有害事象もなく、画像上でも腫瘍の周囲浸潤やリンパ節転移の状況に改善がみられ、腫瘍マーカーの正常化も確認された。そのため以後、患者の強い希望もあって根治手術施行に踏み切ったところ、十二指腸、膵浸潤は劇的に改善しており、根治術は容易であった。尚、病理組織学検査では、腫瘍は粘膜内に散在しているのみで、リンパ節には泡沫細胞の集簇・線維化が認められたが、過去の癌転移巣で、化学療法の効果によって腫瘍細胞が消失したものと考えられた。補助化学療法は行われなかったが、目下、術後19ヵ月経過で無再発生存中である。
©Nankodo Co., Ltd., 2010