発行日 2010年5月1日
Published Date 2010/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2010200980
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87歳女。高度認知症で施設入所中、腹痛・嘔気、腹部膨満感が出現した。胸腹部X線で著明に胃内容が充満・拡張し、両側の横隔膜下に多量の遊離ガスを認め、CTでは胃内容と同様の腹水が腹腔の広範囲に貯留していた。開腹術を施行したところ、腹腔全体に多量の食物残渣の貯留を認め、胃体部大彎に大きな裂孔を認めた。術中の循環動態はきわめて不安定でショック状態が改善しなかったため、腹腔内の残渣を除去・洗浄した後、自動縫合器・吻合器を用いて噴門側胃切除、残胃食道吻合再建術を行った。切除標本で胃体部大彎に5cmにわたり裂孔を認め、穿孔部周囲の胃壁は菲薄化し、黒褐色に変色した壊死組織であった。病理組織像では穿孔部の周辺で胃壁は全層性に壊死に陥り、強く好中球浸潤を伴い、周囲の血管はうっ血していた。悪性所見は認めず、特発性胃破裂と診断された。術後は重篤で集中治療を要し、長期間の嚥下リハビリを行った後に紹介元施設に転院した。
©Nankodo Co., Ltd., 2010