発行日 2009年8月1日
Published Date 2009/8/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2009328909
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
70歳女。患者は排便時出血を主訴とした。貧血、腫瘍マーカーCEA、CA19-9の著明な上昇が認められ、腹部造影CT、下部消化管内視鏡では多発肝転移に伴う直腸癌と診断され、出血コントロール目的で低位前方切除術が施行された。生検では中分化腺癌であり、深部静脈血栓症の予防として術中は間欠的空気圧迫法と弾性ストッキングを併用し、術後は弾性ストッキングのみを使用した。しかし、術後3日目には貧血が進行し、胃体上部前壁に巨大な出血性潰瘍が認められた。絶食とproton pump inhibitorの投与が行われたが、両下肢の腫脹、疼痛を認め、下肢静脈エコーで両大腿静脈血栓が確認された。胃潰瘍からの出血のため、抗凝固療法は開始できず、肺塞栓予防のために下大静脈フィルターを腎静脈分岐末梢側に留置したが、フィルターが開かず、下大静脈血栓が疑われた。以後、手術から6日目には貧血は更に進行し、8日目には癌性腹水を大量に認めた。患者は最終的に肝転移巣が急速に増大し、12日目に死亡となった。
©Nankodo Co., Ltd., 2009