発行日 2008年6月1日
Published Date 2008/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2008236664
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70歳男。臍の有痛性腫瘤を主訴とした。肉眼所見で臍窩は分葉状に隆起し、びらんを生じていた。局所麻酔で腫瘤を楔状切除し、病理診断は中分化腺癌であった。転移と考えられたため、原発巣と進展度を検索するため画像検査を行った。腹部造影CTで肝S3、S4、S6に各1個1.5cm以下の腫瘤を認めたが、臍腫瘤と同様に転位巣と考えた。腫瘤マーカーでCEA、CA19-9の高値を認めた。原発巣は確定できなかったが、腹部にある可能性が高いと判断して開腹術を行ったところ、上行結腸中央部にクルミ大の固い腫瘤があり、漿膜に露出して中心に陥没を有しており、原発性の結腸癌と判断した。ダクラス窩を中心に多数の腹膜播種巣を認め、肝には術中超音波所見で転移巣を呈した腫瘤を認めた。臍部腹膜面には腫瘤部に一致する陥凹がみられた。どの病巣の切除も行わなかった。上行結腸癌の肝転移、腹膜播種、臍転移と診断し、術後13日にFOLFOX療法を開始した。初診後10ヵ月に臍の痛みと滲出液のため臍切除を行い、1年半経過で転移巣の増大や新たな転移の出現はない。
©Nankodo Co., Ltd., 2008