発行日 2016年11月1日
Published Date 2016/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2017078317
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68歳男性。5分間歩行で息切れと胸部絞扼感を自覚し近医を受診、心臓精査の冠状動脈造影で3枝病変を指摘され、外科的血行再建術目的で著者らの心臓血管外科へ紹介となった。受診時、胸部X線像では心胸郭比は53%、肋骨横隔膜角は鋭角、肺うっ血像はみられなかった。また、心電図所見では洞調律、心拍数は61回/分、軸偏位正常で、不完全右脚ブロックであった。頸部エコーでは頸動脈狭窄はなく、心エコーでも左室壁運動異常や弁異常は認められなかった。だが、造影胸腹部CTでは上行大動脈の精査において大動脈径38mmで、内膜の肥厚はみられなかったが、腕頭動脈分岐部レベルの大動脈前面に一部石灰化が認められた。以上、これらの所見を踏まえて、治療として低侵襲冠状動脈バイパス術(MICS CABG)およびoff pump CABGの両者を患者に呈示したところ、患者は早期社会復帰を望むことからMICS CABGを選択した。術中所見では右前腕より動脈ラインの確保後、分離肺換気麻酔を導入して、右内頸静脈より中心静脈ラインを留置した。術前CTより左第5肋間のアプローチを選択して、Thoratrakで肋間を開胸し、両側内胸動脈と大伏在静脈をグラフトとし、上行大動脈への大伏在静脈の吻合にはHeartstring III Proximal Seal Systemを使用した。その結果、手術時間は7時間16分で、術後5時間で人工呼吸器より離脱し抜管、術翌日より立位歩行を主とした心臓リハビリテーションを開始し、術後4日目にICUを退室、冠状動脈造影にて全グラフトの開存を確認してから術後14日目に自宅退院となった。
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