発行日 2016年5月1日
Published Date 2016/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2016298078
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症例1(72歳男性)。最大径74mmの嚢状弓部大動脈瘤に対し人工血管による弓部置換術を行ったが、人工心肺離脱中に冠状動脈攣縮を認め、diltiazem hydrochloride(DTZ)の投与を開始した。しかし、ST上昇、血圧低下、徐脈の寛解、増悪を繰り返した。最終的にDTZ、nicorandil、noradrenalineの投与と大動脈内バルーンパンピング(IABP)補助下に人工心肺を離脱することで、術後第4病日目に軽快退院となった。症例2(74歳男性)。Stanford A型急性大動脈解離に対し人工血管による上行置換術を施行したが、人工心肺離脱後の止血操作中にST上昇と下壁・後側壁運動の低下、血圧低下を認めた。heparinの再投与で体外循環を再開し、人工心肺補助で経過をみたが、ST上昇と壁運動低下の寛解・増悪を繰り返した。以後、冠攣縮を考え、DTZ投与を開始したが改善せず、心拍動下に右冠状動脈#4PDに大伏在静脈を用いてCABGを追加し、人工心肺を離脱し得た。尚、術後benidipine hydrochloride、nicorandil内服で良好に経過していたが、術後第5病日目に排便を契機にST上昇から心室頻拍となり、心肺蘇生を要した。緊急心臓カテーテル検査を行なったところ、3枝の冠状動脈攣縮を確認し、isosorbideの冠状動脈注入を行なうことで速やかな狭窄の改善が得られた。以後、経時的に胸痛発作の出現頻度が減少し、患者は術後第38病日目に独歩退院となった。
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