発行日 2011年8月1日
Published Date 2011/8/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2011338811
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80歳女性。突然、胸痛を自覚し近医を受診、心電図にて急性心筋梗塞を疑われ、著者らの施設へ救急搬送された。来院時、収縮期血圧は70~80mmHg台と低く、心電図上での心筋虚血所見から心原性ショックを伴う急性冠症候群と診断された。そこで、左大腿動脈から大動脈内に大動脈バルーンパンピング(IABP)を挿入後、IABP駆動のまま冠動脈造影を行った。その結果、左冠動脈LMTは拡張期に狭窄を呈しており、収縮期に正常径に戻る間欠的狭窄現象が認められた。この時点で本症例は大動脈解離が疑われたが、大動脈造影の施行で上行大動脈に解離が確認された。以後、心筋虚血は解離腔によってLMTが圧迫されて間欠的に起こると考え、LMTにベアメタルステントを留置したところ、心電図変化と胸部症状は消失し、血行動態も安定した。一方、造影CTでは大動脈解離は上行大動脈から弓部大動脈に限局しており、エントリーは左総頸動脈分岐部の弓部前面に確認され、選択的脳分離体外循環下にエントリー部の切除を行い、人工血管を用いたヘミアーチ置換術を施行した。以上より、血行動態が不安定な場合は、ステント留置を先行することで治療成績を向上できると考えられた。
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