発行日 2014年12月1日
Published Date 2014/12/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2015122723
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
81歳女性。10年前に僧帽弁狭窄兼閉鎖不全症に対する僧帽弁置換術、三尖弁閉鎖不全症に対する三尖弁輪形成術を受けた既往があった。今回、入浴後の脱力感と意識障害を主訴に近医を受診、心エコーにて左房内左心耳付近に遊離球状血栓が認められ入院となった。対処としてヘパリンの持続静注ほか、プロトロンビン時間国際標準比が1.21であることからワルファリンも増量したが、入院第3日目に清拭で坐位となった際に意識消失とチアノーゼが出現し、手術目的で著者らの施設へ紹介となった。入院時、経胸壁心エコーでは左房後壁に2.2×2.4cm大の球形の高エコーな腫瘤がみられ、腫瘤は内部均一で表面平滑で血栓と考えられた、胸部CTでは左房内・後壁に接し37×24mm大の造影欠損ならびに左内心耳内にも径10mmの造影欠損が認められた。以上より、本症例は左房内遊離血栓症の診断にて緊急手術が施行されたところ、術中所見では左房内には径4cm大の完全に遊離した球状血栓の確認に加え、左心耳内にも2cm大の血栓が認められた。そこで、血栓の摘出後に内腔より左心耳閉鎖を試みるも心嚢膜との癒着が強固で断念した。一方、人工弁に血栓は付着しておらず、弁葉の可動性にも問題がないことから弁輪部に付着したパンヌス様組織を切除した結果、摘出した血栓はフィブリンの析出や炎症細胞を伴うも腫瘍性病変は認められなかった。尚、患者は経過良好で、術後第15病日目にリハビリテーション目的で転院となった。
©Nankodo Co., Ltd., 2014