発行日 2009年11月1日
Published Date 2009/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2010071369
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63歳女。患者は動悸を主訴とした。20年間の透析歴があり、今回、透析時の血圧維持が困難になり、心エコーで大動脈弁狭窄症、僧帽弁狭窄症が認められ、著者らの施設へ紹介となった。胸部CTでは上行大動脈背側、大動脈弁、僧帽弁および僧帽弁輪に高度な石灰化が認められた。この高度僧帽弁輪石灰化例では石灰化切除・弁輪形成の後の弁置換等の術式が報告されているが、これらの手技は左室破裂や冠状動脈損傷といった重大な合併症を引き起こす可能性があるため、弁輪石灰化を切除しない術式を著者らは考案した。術式はSJM機械弁の特徴的な構造を生かした簡便な僧帽弁置換術で、その構造によって僧帽弁輪に石灰化した後尖を残したままであっても、残存する石灰化がリーフレット開閉に影響を与えることは少ないと考えられた。更に後尖を縫着糸で固定し、人工弁リーフレットとの干渉をより確実に回避できるものであった。本症例も本術式による僧帽弁置換術を施行した結果、経過は良好であった。
©Nankodo Co., Ltd., 2009