発行日 2008年9月1日
Published Date 2008/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2008366074
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66歳女。28歳時に分娩時に大量出血を生じ、下垂体前葉機能低下症(Seehan症候群)と診断されていた。今回、呼吸困難、全身のむくみを自覚し、症状の増悪を認め救急搬送となった。胸部X線所見にて著明な心拡大と両肺野にうっ血像を認めた。心カテーテルによる冠状動脈造影では、右冠状動脈seg.1に90%狭窄を認めた。僧帽弁閉鎖不全症によるうっ血性心不全と診断した。体外循環開始直後、急激な全身浮腫が出現し、人工心肺側より細胞外液を負荷し、正常な体外循環を維持しえた。しかし、長時間の体外循環は危険性が高いと判断し、僧帽弁置換術のみを行い、右冠状動脈に対しては術後に冠状動脈形成術を行う方針とした。周術期の副腎皮質ステロイド補充として、術直後及び術後1~3日目にmethylprednisoloneを静脈内投与し、術後4日目より術前と同量の経口投与に切り替えた。周術期のホルモン補充は特に行わず、術後4日目より術前と同量のlevothyroxine sodiumを経口投与した。経過は良好で、術後36日目に独歩退院した。
©Nankodo Co., Ltd., 2008