発行日 2006年6月1日
Published Date 2006/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2006313875
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56歳男.患者は健康診断のX線像で石灰化を伴う大動脈拡大を認め,大動脈瘤の疑いで紹介となった.大動脈造影所見では腹腔動脈,上腸間膜動脈は起始部で完全閉塞しており,両側腎動脈は分岐部で狭窄が認められた.下腸間膜動脈は分岐直後に短い茎を有する瓢箪型の動脈瘤を形成し,その後,極めて複雑に蛇行した側副血行を介して,上腸間膜動脈と腹腔動脈灌流域への分布を認めた.また両側腸骨動脈は高度に屈曲蛇行していた.以上より,手術を施行することとなったが,腹腔動脈ならびに上腸間膜動脈ともに分岐部の剥離が困難で,事実上両動脈の血行再建は不可能であった.更に左・中結腸動脈による側副血行路が極めて太く,血流が十分認められたので,下腸間膜動脈瘤を単独切除し,人工血管側枝で再建した.術後,経過は良好であったが,目下のところ,下腸間膜動脈血流だけで腹腔内全臓器灌流を行っているため,下腸間膜動脈に何らかの血流障害が生じた場合の危険性を常に念頭に置き,厳重な経過観察が必要であると考えられた
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