発行日 2004年5月1日
Published Date 2004/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2004211515
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
34歳女.検診で胸部X線上異常影を指摘され,CTで前縦隔腫瘍と診断され,紹介入院となった.腫瘍マーカーはCA19-9のみ224 IU/mlと上昇した.X線所見では上縦隔から左肺門にかけて径約7cmの腫瘤影を認めたが,横隔神経麻痺はみられなかった.CT所見では厚い壁をもつ多胞性の嚢胞部分と充実性の部分からなる8×6cmの腫瘍を前縦隔に認め,腫瘍は左腕頭静脈を圧排し左主肺動脈,大動脈弓に接していた.また,縦隔リンパ節の腫脹は認めなかった.CT下生検所見は奇形腫の診断であった.左腕頭静脈,左胸膜,心膜,左横隔神経の一部を合併切除し腫瘍摘出術を行った.病理組織所見は不整な癒合腺管および粘液湖をなして間質に浸潤増殖する粘液産生腺癌の像であった.異型に乏しい粘液腺がみられること,周囲に胸腺組織が残っていることから胸腺原発の可能性が示唆された.また,気管前リンパ節には転移を認めなかったが,深頸リンパ節に転移を認めた.術後3週の血液検査でCA19-9は22IU/mlと正常化し,二期的に頸部郭清を行ったが,頸部再発をきたして術後1年2ヵ月で癌死した
©Nankodo Co., Ltd., 2004