発行日 2017年5月1日
Published Date 2017/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2017209373
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71歳女。胸部異常陰影を主訴とした。縦隔腫瘍にて紹介受診し、頸部超音波検査は慢性甲状腺炎の所見であり、胸部CTでは前縦隔に境界明瞭で内部不均一な充実性腫瘤(7×5×3cm)を認め、左腕頭静脈を著明に圧排していた。PET-CTでは腫脹した甲状腺全体に強い集積がある一方、その尾側の縦隔病変に淡い集積を認め、頸部甲状腺と腫瘍の境界は明瞭であった。胸骨正中切開で縦隔病変を胸腺と一塊に切除し、病理組織所見では大小の濾胞構造や小血管の介在した類洞構造を呈する癌細胞増殖がみられ、被膜内や被膜近傍の静脈内に浸潤を認めたが、被膜外への浸潤はなかった。免疫染色では甲状腺転写因子-1、サイログロブリン、サイトケラチン7に陽性、サイトケラチン20に陰性であり、異所性甲状腺濾胞癌と診断した。本症例は迷入性縦隔内甲状腺腫に由来した濾胞癌と考えられ、術後4年経過時点で問題なく経過観察中である。
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