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Ⅰ.はじめに
名古屋大学医学部保健学科看護学専攻(以下、本校とする)では、「人体の構造や機能、病態とその治療など、健康に関連する教科目および社会や環境理解に関連する教科目の知識を看護診断に連携させ、看護介入の基盤となる看護診断能力を育てる」ことを教育目標の一つに掲げている1)。
ここでの「看護診断能力」とは、アセスメント能力といえよう。本校では、段階的にその力をつけていくために、4年間を通したカリキュラムを構成し、2年次には看護診断概念の背景にある中範囲理論の学習を目的とした「看護診断学」を開講している。さらに「自分のアセスメント技能改善の動機づけをすること」を目的に、「看護診断学実習A」(以下、本実習とする)としてインタビューを中心としたアセスメント実習を行っている。
本実習は、1)看護診断の概念を用いたアセスメントに焦点を絞ったこと、2)集中的に実習をするのではなく通常の時間割に実習時間を組み込んだこと、の2点が特徴である。
一般的に低学年におけるアセスメントの実習形態としては、1〜2週間集中して患者を受け持ち、その中で看護過程を展開する方法がとられることが多く2)3)4)5)、4年課程においても同様であり6)、本実習のように看護診断の概念を用いたアセスメントだけに焦点を絞った実習の報告は、われわれの知る限りない。また、早期暴露や早期体験学習と呼ばれる実習のように、早期の段階で、患者と対話をする機会をもったり、患者の療養生活を実際に知る目的のための実習は行われているが7)8)、それらも集中的な実習を行っているものであり、通常の時間割に実習時間を組み込んだ報告は、今のところ見当たらない。
本実習は、学生にとって「現象」をイメージするための手助けとなり、看護診断の概念を学習する礎になるとわれわれは考えている。看護診断の概念は、「現象」がイメージできなければ理解することが難しいと考えられるからである。また、臨床の場にいることだけで圧倒されストレスが高いとされる、実習の経験が少ない学生9)10)11)にとって、1回の実習時間が短く週に一度同じ病棟に通うという実習形態は、毎回の振り返りを経て学習することができるという利点があると考えている。
しかしその一方で、この方法のもたらす欠点も懸念される。例えば、継続して患者とかかわることができず、しかもアセスメントだけで終わることにより、部分的に患者をとらえることになるのではないかということがあげられる。
そこで今回は、本実習のプログラムを概説し、この実習を学生はどのように受けとめたかについて、平成11年度の実績にもとづいて記述し、先述した2点の特徴を持つ本実習方法の利点と今後の課題をまとめたので、報告する。
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