Japanese
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資料
母乳に含まれるトランス型不飽和脂肪酸の課題
Recent Problem of Trans Fatty Acids in Human Milk
炭原 加代
1
Kayo Sumihara
1
1大阪府立看護大学医療技術短期大学
1Department of Nursing, Osaka Prefectural College of Health Sciences
pp.58-65
発行日 1997年2月28日
Published Date 1997/2/28
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- Abstract 文献概要
- 参考文献 Reference
Ⅰ.諸言 母乳で育てられた乳児は病気に罹りにくく最適であることが明らかになり,母乳哺育の重要性が再認識されてきた.平成2年度の母乳哺育状況を見ると,1ヶ月児で母乳のみの乳児は44.1%,混合栄養児は42.8%,3ヶ月児で母乳のみが37.5%,混合栄養児は29.4%1)である.
母乳成分は同一人でも日内変動はもとより母親の栄養状態,泌乳期,年齢,在胎,授乳時のどの時点で採取したかなどによって影響されるが,母乳の脂肪酸組成は母親が摂取する食事内容に大きく影響される2,3).近年の食生活は,西欧化とともに社会及び経済的変化による都市化や核家族化および外食産業等の発展により油脂類の消費を拡大した.この脂質摂取の増加は単に量だけでなくその内容の変化も伴なっている.さらに,ファミリーレストランの隆盛あるいはファーストフードや加工食品などの消費が増加した.これは低原価のマーガリンやショートニングおよび食用精製加工油脂の多量の供給より成り立っていて,使用されている食用加工油脂の多くは水素添加加工したものであり,このような食品にはトランス型不飽和脂肪酸(以下トランス酸という)が含まれている4~6).そして人間の母乳にも本来天然の脂質に存在しないトランス酸が常に少量検出されている7~9).母乳の脂質および脂肪酸組成については多くの報告があり10,11),日本人の母乳の脂肪酸組成についても詳細な報告が見られるが12),トランス酸についての報告は少なく,トランス酸摂取による生体への評価や乳児にとって重要な栄養源である母乳中のトランス酸の評価が未だ必ずしも明確にされていない.
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