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特集 精神・神経疾患とω3不飽和脂肪酸
統合失調症と多価不飽和脂肪酸
-――発症リスクの軽減に向けて
Polyunsaturated fatty acids in schizophrenia
――Efforts to reduce the risk of psychosis
住吉 太幹
1
,
樋口 悠子
2
Tomiki SUMIYOSHI
1
,
Yuko HIGUCHI
2
1国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所児童・予防精神医学研究部
2富山大学大学院学術研究部神経精神医学講座
キーワード:
ω3不飽和脂肪酸
,
ω6不飽和脂肪酸
,
細胞膜リン脂質
,
精神病
,
早期介入
Keyword:
ω3不飽和脂肪酸
,
ω6不飽和脂肪酸
,
細胞膜リン脂質
,
精神病
,
早期介入
pp.753-759
発行日 2022年8月20日
Published Date 2022/8/20
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28207753
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統合失調症では神経細胞膜中のリン脂質の異常を認め,同疾患の病態生理や発症に関与するとされる.特に,リン脂質分子を構成する脂肪酸のうち,ω3系やω6系の多価不飽和脂肪酸(PUFA)濃度が,統合失調症や精神病ハイリスク状態(ARMS)で減少する.また,これらの生化学的変化は細胞膜に包含される各種受容体を介する神経伝達効率に影響し,精神病症状や認知機能などを左右する.以上の背景から,精神病症状の軽減や機能レベル回復に向けたω3不飽和脂肪酸(以下,ω3)のARMS者への予防的投与が検討されてきた.また,中枢神経細胞膜の脂肪酸組成を反映する赤血球膜中のω3濃度による,社会機能や治療反応性などの予後予測が,統合失調症患者やARMS者を対象に試みられている.以上の知見に基づく,脂肪酸やリン脂質分子をターゲットとする統合失調症の早期診断・治療法の開発が,発症リスクの軽減やメンタルヘルスの向上につながると期待される.
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