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はじめに
看護診断を臨床に導入することで,何か変化したでしょうか?患者さんやご家族は,よりよい看護を受けていると感じておられるでしょうか.
看護診断を2年間使用している病院で,看護記録を拝見させていただいたことがあります.ある患者さんには「疼痛」が診断として取り上げられていました.SOAP形式による毎日の看護記録を読み進むと,患者さんの言葉であるSばかりが目につきました.まず初日の記録は「今日は動くと痛いです」とありました.次の日は「昨日と変わらない痛みです」とあります.そして次の日は「いつもと痛みは変わらない」といった具合です.10日間ほどの記録をめくってみましたが,患者さんの訴えは何ら変わっていません.これって何か変だと思いませんか?看護診断したまではよかったのですが,問題の「疼痛」に対する,看護婦たちの積極的な取り組みがみえてこないのです.みなさんには思い当たるようなことがありませんか?
看護診断をして患者さんの抱える問題を取り上げたからには,問題の解決を目指して,介入計画を立てます.計画用紙をいっぱいにしただけでは患者さんの状態は変わりません.計画したケアを実行する必要があります.ケアを実施したことで,疼痛の緩和が図れたのかどうか,ケアは適切だったのかどうかの評価も重要です.目指しているゴール,看護目標が現実的ではない場合もあります.そんなときは目標の再設定が必要となります.このように口では簡単に言えることなのに,日々の看護のなかでそれが難しいのはなぜでしょうか.
このような現状が臨床で続く原因は,「個々の看護婦の勉強不足や能力不足」だけではないようです.では何が他の原因かというと,それは,看護の学問としての未熟さ,発達不足,実践に役立つ理論の不足ではないかと思うのです.看護診断的表現をしてみますと,今の日本の看護学は「新しい学問領域であることに関連した知識不足」状態といえそうです.だからといって,個々の看護婦が学習を続けなくてもよい,というわけでは決してありません.専門職に携わる1人としての自覚をもち,看護という学問全体を少しでも発展させる努力にかかわる必要があります.かなり極端な視点からの意見だと思われるでしょう.しかし,以下に述べる看護介入や看護結果用語の発展経緯,その理論的意義をご理解いただくと,この視点が少しでもおわかりいただけるのではないかと思います.
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