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はじめに—ポリオとは
ポリオウイルスはエンテロウイルスに属し,感染力が強く,糞便を介して経口感染し,咽頭や消化管で増殖して1〜3週間の潜伏期ののち,ウイルスは完全に体外へ排出されてしまう.90〜95%は不顕性感染であるが,5%に発熱,咽頭や消化器症状など感冒様症状(不全型)がみられ,1%は無菌性髄膜炎(非麻痺型)を起こし,ごく一部が中枢神経へ感染していわゆる「ポリオ(急性灰白髄炎)(麻痺型)」を生じる.ポリオ(麻痺型)の85%は脊髄前角細胞障害により四肢の弛緩性麻痺を呈する脊髄型であり,小児期に発症が多く脊髄性小児麻痺(小児麻痺)とも呼ばれる.また,ポリオ(麻痺型)は,他に嚥下障害や呼吸障害を呈する延髄型,脳炎症状が中心となる脳炎型があり,しばしば複合して症状を呈する1).
典型的な急性期のポリオ(麻痺型)は,罹患後に数日間の高熱や頭痛など感冒症状ののち,急速に進行する非対称性の弛緩性麻痺がみられる.正常または部分的に傷害を受けた前角細胞の神経再支配により,発症後3〜4カ月頃より筋力回復を認め,多くはほとんど正常か一定程度まで筋力が増加する.また数年間は,正常な残存筋肥大による代償でわずかに改善する可能性がある1).
日本では,1940年代後半から1960年初頭にポリオが大流行したが,1961年の経口生ワクチン導入により終息した2).以後も高いワクチン接種率が保たれ,1981年以降は野生株ポリオウイルスによるポリオ症例はない.しかし,経口生ワクチン副反応として,接種者やその接触者にワクチン関連麻痺(vaccine-associated paralytic poliomyelitis:VAPP)が200万接種あたり1例生じ3),野生株ポリオが根絶されたわが国の重大な問題であった.2012年9月にVAPP予防のため不活化ワクチン(注射)へ切り替わり,2020年現在,定期接種が行われている2).
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