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はじめに
我が国では,ポリオは1960年代に大流行したが,1965年以降新たな発症をほとんど見なくなった.ポリオ罹患者は急性ポリオ発症後,いったん機能回復し,約30〜40年の安定期を経て新たに様々な症状を生じ,機能低下をきたすことが判明した(図1).つまり,ポリオ罹患者は中高年になるにつれ,筋力低下,関節拘縮,四肢体幹の変形,疼痛,歩行障害の増悪,日常生活活動(ADL)の制限などの機能障害や活動制限を生じ,これらの病態をポストポリオ症候群(PPS)と呼ぶ.PPSに関しては1980年代以降,多数の報告1〜5)がある.我が国のポリオの流行は約50〜60年前であり,乳幼児期にポリオに罹患した方々は現在いわゆる働き盛りの壮年期〜初老期にさしかかり,PPSを発症する年代となってきた.PPSは当初,麻痺性ポリオ罹患者から発症すると考えられていたが,非麻痺性ポリオ罹患者からも発症したとの報告6)もある.PPSの発症率はポリオ罹患者の28〜64%と推定され7),我が国では人口10万人あたり18.0人と報告されている8).
PPS発症の原因は不明であり,有効な治療法は確立されていない.佐伯ら9)は,PPSの病態を特徴づける重要な所見は“新たな筋力低下”や“疲労”であり,新たな筋力低下がPPSの中核的症状である.これは単なる加齢現象ではなく,過用5,10)などが発症促進要因となり脱神経を生じる.PPSに対する有効な治療法がない現在,PPS発症予防が最も有効な治療法となり,筋力の変化の推移を把握することは,PPS予防の対策を講ずる上で有用である.我々は,PPS発症要因や危険要因の同定を目的に,2001年よりポリオ罹患者を対象としたポリオ相談会を開始し,経年的に検診を実施し,ポリオ罹患者の長期的な自然経過を追跡している.そこで本パネルディスカッションでは,ポリオ相談会に参加している症例に関して,筋力の長期的経過を提示するとともに筋力低下予防策について述べる.
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