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はじめに
胸椎後縦靭帯骨化症(thoracic ossification of the posterior longitudinal ligament:T-OPLL)は,胸椎レベルでOPLLによる脊髄の圧迫が生じることで,さまざまな神経症状を引き起こす2).T-OPLLの重症度は頸椎OPLLよりも高いことが知られており,これは胸椎が後弯しており,また血流の問題などからも胸髄が他部位の脊髄より脆弱であることに起因している11).T-OPLLに対する治療選択肢は限られており,手術が唯一の有効な治療法である1).しかし手術はしばしば困難であり,以前に報告された多施設共同研究では,術後運動麻痺の発生が32.2%と非常に高率であった3).一般に,後弯している胸椎では,前方アプローチによるOPLLの切除や浮上により十分な脊髄除圧が達成される5,6).しかし,胸椎への前方アプローチや除圧手技が難しいため,前方除圧固定術(anterior decompression with fusion:ADF)が行われることはまれである.このため,一般的には後方除圧固定術(posterior decompression with fusion:PDF)のほうが広く適用されている.T-OPLLに対する手術治療はいずれも限られた施設でしか行われておらず,ADFまたはPDFの手術リスクを調査した研究は数少ない.周術期合併症に関する情報は,手術適応や術式を決定するうえで特に重要である.そこで本研究では,本邦の大規模な全国入院患者データベースであるDPC(Diagnosis Procedure Combination)システムを用いた,T-OPLLに対するADFとPDFの周術期合併症調査の結果を解説し,代表的な合併症についても紹介する.
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