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はじめに—頸椎前方手術に術中超音波検査を導入した経緯
脊椎手術における術中超音波検査の有用性については,1980年代初頭から報告が相次ぎ2,4,16),本邦でも頸椎前方および後方手術において広く取り入れられるようになった5,17).しかし,本邦における頸部脊髄症に対する手術は脊柱管拡大術(椎弓形成術)が主流であったことと,超音波による脊髄の観察にはある程度の大きさの骨切除が必要なため,頸椎後方手術における有用性の報告が多数を占めた13).著者もそれらの文献に触発されて,1990年代半ばより正中縦割の脊柱管拡大術(岩崎法および黒川法)において術中超音波検査を開始したが,術前の画像診断では知ることができない脊髄の拍動が,超音波を用いることで明瞭かつリアルタイムに描出できることに大きな可能性を感じた.そこで,術中の脊髄拍動様式を系統的に4型に分類し,臨床成績との関係を調査した.その研究結果から,脊柱管拡大後も脊髄が前方の圧迫因子から逃れることができない症例では,術後の神経症状の改善が不良となることが明らかとなった9).しかし,頸椎後弯症例などで術中に脊髄の除圧状態が不良であることが判明した際,椎弓拡大を頭尾側あるいは左右に拡げても脊髄の拍動様式はほとんど改善しないことも経験した.つまり,頸椎後方手術の術中に脊髄除圧が不十分であることが判明しても,“時すでに遅し”であることを実感した.
一方,頸椎変性疾患の多くは神経圧迫因子が脊髄や神経根の前方に存在することから,われわれは前方進入にてこれらの圧迫因子を直接除去する前方除圧術(減圧術)の精度向上にも取り組んできた.その一環として,術中の除圧過程で超音波視による評価を取り入れようとしたが,体表に使用する一般的なプローブではサイズが大き過ぎて術野に入らなかったり,入ったとしても超音波の入射が斜めになって歪んだ画像しか描出できなかったりした.そこで,先端ができる限り小さなプローブを探したところ,30×15mmのチップを有するhockey型のプローブを見つけ出し,2001年から頸椎前方手術の術中評価に導入した(現在は先端が15×15mmのプローブを使用している).そして,手術操作の各ステップで逐一超音波による評価を実施することで,さまざまな有益な情報が得られることに気づいた.以来,当施設では頸椎手術の全症例に術中超音波検査を実施している(図1).本稿では,頸椎前方手術においてわれわれが重視している超音波画像の評価方法を紹介し,これまでの研究で得られた知見や,術中超音波による評価の将来展望について論述する.
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