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はじめに
従来,腰痛は,内臓由来,血管由来,神経性由来,心因性,脊椎性と5つに大別されてきた.しかし,実際,その病理を明らかにできる腰痛の頻度は15%程度しかない.日常診療上,腰痛診断の多くは,心筋梗塞や糖尿病のように病理学的な客観的概念に基づいているものではない.大部分は臨床医の考え方により診断がつけられているのが現状である.腰痛は,心理的,社会的因子が早期からその増悪や遷延化に深く関与している.腰痛の大部分は,非器質性(心因性)疼痛,侵害受容性疼痛,および神経障害性疼痛の3つの因子を有していると考えられる.非特異的腰痛とは,脊椎に特異的な病理が見出せない腰痛のことをいう.病歴や理学所見から得られた異常所見に対応した画像所見が存在するかどうかという診断の進め方をしないと,無症状の形態異常や加齢的変化による形態異常を急性腰痛の原因と誤って判定してしまう.画像は,あくまでも愁訴を説明し得る機能異常に対応しているか否かという観点からみる必要がある.「整形外科患者に対する精神医学的問題評価のための簡易質問票(Brief Scale for Psychiatric Problems in Orthopaedic Patients:BS-POP)」は,患者の精神医学的問題の有無をスクリーニングするのに有用である.腰痛の病態は多様であり,いまだに統一された分析法は存在しない.また,腰痛に対する治療で科学的に立証された手技は少ない.われわれは,これらの事実を十分認識したうえで腰痛対策を考慮する必要がある.器質的変化が軽微であるにもかかわらず痛みの訴えが強いというように,自覚症状と他覚所見に乖離が認められる症例では,精神医学的問題や心理社会的因子の関与が疑われる.痛みの増悪や遷延化には心理社会的因子が深く関与している場合があることを患者自身に説明のうえ,同意が得られたならば精神科へ紹介し,リエゾン診療を開始する.
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