編集後記

　コロナ禍の中での多くの感染者を出し，毎日，全国で多くの死亡報告がある．ワクチンさえ早く，全国に行き渡っていたらと思うと残念でならない．これは，この国の危機管理能力の低さ，硬直した組織，旧態依然とした社会慣習への警笛であると思う．自然災害への対応にしても然りである．

　さて，今回の特集は「股関節疾患への作業療法」である．お読みになられてどのような感想をもたれたであろうか？「股関節周囲の機能と解剖」，「大腿骨近位部骨折における分類と手術法について」，「人工股関節（全置換術）を生活行為向上マネジメントの視点で捉えたアプローチ」の3編はICFを前提に読むと，さらに興味深く読めると思う．林氏が述べるように，支援には健康，心身機能，活動・参加のすべてが必要で，OTの出番である．加えて，高齢者へは，地位，財産，住居，仲間，健康，自立，生命の視点からの支援（生活者としての視点）の必要性を述べている．これは，言い換えると「人権と尊厳」につながる内容であり，OTはもとより医療，介護の現場への警笛であると思う．