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編集後記
香山 明美
pp.210
発行日 2021年2月15日
Published Date 2021/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001202424
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大学の研究室から外を眺めれば,はらはらと雪が舞っている.今季一番の寒さの中,大雪になりそうな予報も出ている.寒さもまた,われわれにとって必要な季節の循環ではあるが,この寒波の中で,新型コロナウイルス感染症拡大の波は大きくなるばかりである.
先日,虐待され続けた娘が,やがて成人し母親を殺してしまうドラマをみた.虐待を受け続けている子どもがそこから抜け出すには,親から離れるしかない.その方法として親を殺してしまう,その方法しかなかった.何とも痛ましい限りの話である.虐待や殺人は社会的には犯罪事件である.しかし,虐待をしてしまった親もまた,虐待を受けたり,親からの愛情を受けられないで育った背景があるといわれている.実際に筆者が体験した虐待のケースの親もまた,同じような境遇で育っていた.虐待を受けているケースはその過程で,うつ病やアルコールや薬物依存,そして非行,犯罪といった流れをとるケースも多い.犯罪は自ら望んで行うケースはほぼなく,生きていく過程の中で逃れようのない状況になってしまうと思われる.新型コロナウイルス感染症拡大が,閉鎖的な生活を余儀なくし,上記のような虐待のケースを増加させていることも心配されている.経済的なダメージがいち早く取り上げられているが,国民に与える心理的な影響を取り上げる必要性があると感じている.
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