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Key Questions
Q1:発達障害にかかわる制度にはどのようなものがあるか?
Q2:発達障害にかかわるOTの役割とは?
Q3:発達障害にかかわるOTの課題とは?
はじめに
2005年(平成17年)に「発達障害者支援法」が施行され,10年以上が経過した2016年(平成28年)に,超党派の議員立法により「発達障害者支援法の一部を改正する法律」が成立し現在に至っている.この間,障害保健福祉と教育領域に関する制度も同時に改正され,発達障害に対する理解・啓発が促進されてきた.しかし,当事者・家族にとって重要な,住み慣れた地域で一貫性のある,しかも継続的な支援を受けるための制度が十分とはいえない現状である.そのため,厚生労働省と文部科学省は発達障害にかかわるさまざまな課題に省庁間連携として継続的に取り組み,関係各省庁も障害者の自立支援や社会参加の促進を図るために関連法や制度の見直しを進めている.
OTは医療専門職であり,医療領域に半数以上が勤務している.一方で,作業療法の特性から,福祉・教育・労働・保健等の領域で活躍するOTも,わずかながら年々増えている.社会のニーズに応えるべくOTが興味・関心を広げ,職域を徐々に拡大しているのである.これからもOTはさまざまな領域で専門性を活かし,支援技術を互いに研鑽し,もっている能力を発揮することで,当事者・家族への直接的な支援の充実を図る必要がある.また,当事者・家族を取り巻く環境に対して働きかけ,環境整備や家族支援といった間接的な支援に対しても能力を発揮する必要がある.
発達障害にOTが関与することは,OTが人とかかわる専門職であることからも重要と認識している.なぜなら,人の成長過程に伴うプロセス体験を共有することで,乳幼児期から高齢期までライフステージに沿って見通す力を養うことができるからである.そのためにも,OTは作業療法の特性を活かし,その専門性をさらに活用しなくてはならない.OTは幅広い視点と現状を的確に把握するための分析力を有し,当事者・家族にとって必要な支援を選択し提供できる職種である.
OTはまず発達障害の現状を知り,背景に何があるのかを理解したうえで,自らの役割や課題を明確にしておくべきである.今後も地域で一人ひとりの当事者・家族にかかわり続けていただきたい.制度の間で支援につながれず困っている方々のためにも,発達障害にかかわるOTが数多く育つことを期待している.
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