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はじめに
2007年(平成19年)4月1日付けで,文部科学省初等中等教育局長より,各都道府県の知事および教育委員会教育長宛てに特別支援教育制度の推進について通達1)され約10年が経過する.この間は,日本作業療法士協会(以下,OT協会)が,学校教育支援に医療専門職であるOTがどうかかわるのか,どのようにかかわれるのかを,常に現状と課題を見極めながら取り組んだ期間ともいえる.
OT協会には,地域包括ケアシステムの構築の推進のためにも,保健,医療,教育,福祉,労働領域間で一貫した継続性のある支援が提供できる体制の整備が求められている.教育領域にOTがかかわるのは,住み慣れた地域において個人のライフステージに沿った安心で安全な支援を,必要性に応じ継続的に提供する必要があるからである.切れ目のない支援の提供こそが,活動・参加を促進し,個人の自立支援を実現することになる.これからも,作業療法の特性とOTの専門性を教育の場で提示していくべきである.
OT協会は,当事者団体を含む関係・関連団体と積極的に渉外活動を行い,当事者・保護者の意見を尊重し,共に現状と課題を共有しながら,専門職としてできる支援のあり方を模索し活動を展開している.その活動の成果として,文部科学省等の関係省庁との連携が構築できたことは大きな第一歩であった.これには,各都道府県作業療法士会や個々のOTの先行的な取り組み実績が評価されたことも重要な要因となった.結果として,学校教育現場においてOTの存在や役割が認知され,外部専門家としての位置づけが明確になったといえる.
1人のOTの実績は,その場の対応で終わってしまう可能性がある.そこで,学校教育支援における作業療法の有効事例を収集・提示する必要がある.また,OT協会としては,学校教育支援にかかわることができる人材を育成することが急務である.OTは名称独占であって業務独占ではないし,学校教育現場において医療専門職として作業療法を直接当事者に提供するには制度上の制限も存在する.また,種々の活動や物・道具を用いた支援方法がある中でOTの専門性をアピールするためにも,実践例を集約し検証していく必要がある.OT間で情報を共有し,技術を継承しながら,次世代につながる理論の提示と将来の人材を育成しなくてはならない.人材育成に関しては,生涯教育制度を有効活用し推進すべきである.
今後もOTが積極的に学校教育支援にかかわるためには,より具体的な取り組みが必要となるだろう.本稿では,OT協会のこれまでの活動を振り返り,理事としての立場を踏まえつつ,私見も含め述べる.
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