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はじめに
2014年7月,厚生労働省の「障害児支援の在り方に関する検討会」がまとめた報告書1)の中で,障害のある子への支援のあり方を考えるうえでの重要なポイントの1つとして「ライフステージに応じた切れ目の無い支援(縦の連携)」が挙げられた。障害のある子への支援は,幼児期は保育所や幼稚園,学校に通っている間は小学校,中学校,高校などと中心となる支援者が数年ごとに変わるため,その一貫性が途切れやすい。幼保小の連携,障害児相談支援などの制度を整備することで改善に向かっているのだろうが,まだまだ十分とは言えない。
障害のある子へのSTのかかわりを見てみると,医療機関以外では児童発達支援事業など,幼児期で終了してしまうことが少なくない。就学している子どもを対象とした放課後等デイサービスに勤務するSTもいるが,配置を義務づけされた職種ではないため少数である。特別支援教育においても,平成20(2008)年度に実施された「PT,OT,ST等の外部専門家を活用した指導方法等の改善に関する実践研究事業」など,STを含め,医療福祉の専門家が活用されるケースが出てきているものの,制度的に見れば「切れ目の無い支援」に与える影響は少ない。
筆者が勤務する公益社団法人発達協会(以下,当法人)は,発達障害・知的障害のある子を対象にした医療,療育のほか,指導・支援者,専門職を主な対象に啓発事業を行っている。医療部門である王子クリニック(以下,当院)は幼児から成人まで,療育部門である指導室は幼児から高校生(一部,成人を含む)を対象としているため,例えば「小学校から中学校への移行を切れ目無く」といったこととは異なるものの,微力ながらSTなどによる長期にわたるかかわりが可能となっている。本稿では当法人での事例をふまえ,発達障害・知的障害のある子への長期のかかわりについてまとめてみたい。
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