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本号は,私自身にとっても,とても読み応えのあるものでした.研究も含め興味深く,日常の現場の延長で読ませていただきました.特に印象に残ったのは,まず「食べる楽しみを支える」.嚥下評価が,大きな病院のみではなく広く実施されるようになってきて,明らかに「食べさせない」ことが増えてきている印象を受けています.嚥下評価の未熟さも影響するのかもしれません.胃ろうが象徴的かもしれませんが,白か黒かという未熟な議論にもしばしば遭遇します.その状況でOTがどう役割を果たしていくのか,どう考えるのか,とても参考になりました.
また,特集「生きる声からわれわれが得るもの」はわくわくしながら,また,いろいろなことを頭の中で駆け巡らせながら読みました.もともとの特集企画は「地域生活支援」からのスタートで,ここまでの内容にしてくださったゲストエディタの宮崎宏興氏,また,原稿を寄せてくださった皆さんには,とても感謝しています.日本では,これまでの100年で実に9,000万人の人口が増えました.狭い国土,乏しい産業の中で多くの人がひしめき合い,競争し,多くの方が社会からこぼされていった時代であったと個人的には考えています.さらに,これからの100年で,また9,000万人の人口減少が予想されています.その時代を,私たちはどう生き抜いていくのか.これまで排除し取り残されてきた方々も,また,競争に疲れ果てた方々も,また,競争には勝ってきたが孤独な方々も,過去の延長線上にはないこれからを生き抜いていくために必要なことが,特集の原稿の中にちりばめられているような気がします.数年に一回は読み直したい.そんな内容でした.宮崎氏の「あちこち」の次も気になります.
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