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「環境」とは……高森氏が述べるようにその意味は幅広い.今回の特集「『環境』と作業療法」では,OTがかかわる,かかわることのできる「環境」には何があるのか,を具体的に示していただけた.作業療法が関係する環境といえば,誰もが住環境整備や家族を思い浮かべるが,対象者が住む地域全体をとらえたかかわりができること,そこに作業療法の視点が大いに役立つことを学ぶことができた.そして,どの内容にも共通していたことは,現存していない事柄を創造するという視点であると感じた.対象者の暮らしを考えたときに,今あるものだけでは足りないと感じ,「こんな環境があれば」を実現するために,OT自身が今ある環境から踏み出し,自らの枠の外につながり,一歩一歩築いてこられた実践の足跡と作業療法の可能性を感じることができた.
これからのケアについて,地域包括ケアシステムに向けた取り組みの重要性が,繰り返し述べられているが,OT個人で何ができるのかが具体的にはわからないと感じている人が多いのではないだろうか.安本氏の本文にあるように,国は高齢者リハには,「生活期リハの中で,『活動』や『参加』への積極的なアプローチの必要性と『環境』への支援」が必要であると示している.OTは対象者にとって大切な「活動」や「参加」に対するアプローチを専門とする職種である.また,「環境」についても今回の特集から,幅広い取り組みが行えることが具体的にわかった.後は,目の前の対象者個々を「心身機能」に加えて,「活動」,「参加」,「環境」までとらえ,またアプローチ自体も幅広い視点で実践していくことである.個をとらえ,そこから得られた課題は地域の課題にもつながる.その課題解決に向け,地域の身近な資源とつながり,新たな環境を創造すること,それこそが,地域包括ケアシステムの目指す支援への一歩につながると考える.
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