特集 輸液・ボリューム管理
Part 1 総論
2.輸液の薬理学—薬物としての輸液製剤を考える
日比野 将也
1
,
植西 憲達
1
,
藤谷 茂樹
2,3
Masaya HIBINO
1
,
Norimichi UENISHI
1
,
Shigeki FUJITANI
2,3
1藤田保健衛生大学 救急総合内科
2聖マリアンナ医科大学 救急医学
3東京ベイ・浦安市川医療センター
pp.273-298
発行日 2017年4月1日
Published Date 2017/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200380
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輸液に用いる製剤は「薬物」である。しかし,そのような観点から輸液製剤を考える機会はさほどないと思われる。輸液製剤に関して薬理学的な発想があれば,さらに輸液に関して理解が進み,適材適所で輸液戦略を立てることができるのではないだろうか。本稿では,薬理学的な観点から輸液と輸血の基礎について考えてみたい。
Summary
●晶質液と膠質液といった輸液製剤は,ともに集中治療領域で最も多く使われる「薬物」である。両者の違いは溶質の分子や電解質濃度,浸透圧などである。
●晶質液として汎用される乳酸リンゲル液,酢酸リンゲル液,重炭酸リンゲル液は,乳酸アシドーシスに対する懸念から進化してきたが,臨床的なエビデンスは乏しく,使い分けの有用性は不明な点が多い。
●晶質液,膠質液が血管内にとどまる量は,従来のコンパートメントモデルやStarlingの式だけでは説明がつかず,患者の病態やボリュームステータスによるところが大きい(context sensitive)。
●輸液や輸血は薬物であり,コストがかかる。最も多く使う薬物であるからこそ費用対効果を意識して日常的に使用することを心掛けたい。
●インスリンは,輸液容器やラインに吸着し,しかも輸液内のpHによっても変化し得る。患者以外の因子によって血糖が変動してしまうことを考慮する必要がある。
●末梢静脈輸液における静脈炎は医原性疾患であり,可能なかぎり避けたい。ルートを少しでも長く使用する方法はいくつかあるが,それらを駆使して1日でも長く使用するための工夫をするよりも,不要なルートは抜去し,静脈炎を疑った場合はすみやかにルートを入れ替えることが重要である。
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